ヨハネの黙示録の緒論*1

著者

この書は著者自身がヨハネであると述べている。したがって、伝統的にこの書はゼベダイの子使徒ヨハネの著作であるとされてきた。しかし、黙示録の文体がヨハネの福音書や三つの手紙と異なることから、使途ヨハネが著者であることを否定する者もいるが、黙示録の内容が幻によって与えられたものであるという特殊性と、パトモス島に流されていたという環境の変化などを考えるなら、文体の相違は説明できる。

執筆時代

キリスト者がローマの迫害を受けていた時代に書かれたことは、内容から見て明らかである。この迫害によって、ある者は信仰を捨て、皇帝礼拝を受け入れた。この書は紀元六十四年のローマの大火に引き続いて起こったネロの迫害の時に書かれた、と考える者がいる。しかし、それよりもドミティアヌス(81-96年)の迫害の時に書かれたと考える方が適切である。したがって、この書は90年代に書かれたと考えられう。

執筆場所

1章9節でヨハネは「パトモスという島にいた」と述べている。これは、エペソの南西約90キロのエーゲ海上にある、南北16キロ、東西9キロの三日月形をした小さな島である。ヨハネは迫害を受けてこの島に流されていたが、ここで幻を示され、この書を書いた。

執筆事情

この書は、主に直接、ヨハネに書き送るよう命令したことによって書かれたのものである。当時の教会は迫害にあっていたので、信者たちを励まし、後に起こることを示して主の再臨の時を信仰と忍耐をもって待ち望むように勧めるため、この書は書かれたと思われる。

あて先

この書はもともとアジヤにある七つの教会にあてられたものであるが、必ずしも、これらの教会に限定する必要はなく、これらの教会によって代表されるすべての教会にあてられていると考えることもできる。

特色

この書は「黙示」と言われているように、普通の書とは異なり、象徴的表現を多く用いている。その中のあるものは説明されているが、大部分は何を意味しているのか読者が解釈しなければならない。この書の解釈は四つに大別することができる。

  1. 過去主義:この書の預言は初代教会の歴史によって成就されたと考える。
  2. 歴史主義:この書はヨハネの時代から歴史の週末までをパノラマ的に描いていると考える。
  3. 精神主義:実際の出来事についてではなく、キリスト教が悪の勢力と戦わなければならないという、霊的原則を述べていると考える。
  4. 未来主義:この書の大部分(4-22章)は未来に属する預言であると考える。この立場が、この書を理解する上で最も適切であると考えられる。

主題

「見よ。わたしはすぐに来る。わたしはそれぞれのしわざに応じて報いるために、私の報いを携えてくる。」22章12節

ヨハネのもくしろく*2

黙示録の位置


*1 聖書、新改訳、注解・索引・チェーン式印照付、p.437、いのちのことば社、東京都新宿区信濃町6、ISBN 4-264-00488-8、1981年9月1日発行~1998年7月1日10刷。
*2 聖書辞典、pp.848-850、日本基督教団出版局、1961年9月20日発行~1989年12月25日31版発行、ISBN 4-8148-2001-8 C1516日キ版。

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Last-modified: 2020-12-26 (土) 22:07:23